自治体ホームページのサーバー費用は適正ですか?仕様書見直し&クラウド移行で最大88%コスト削減

地方自治体のホームページ運用において、メインの庁舎サイト以外にも、学習センター、文化施設、図書館など、複数の小規模サイトを運営されているケースは少なくありません。これらのサイトの運用コストについて、一度立ち止まって見直してみることをお勧めします。
特に、個人情報を扱わない小規模なサイトで年間50万円以上のサーバー運用費が発生している場合、コスト構造を見直す余地がある可能性があります。
本記事では、自治体のサーバーコストが高額になりがちな理由と、入札仕様書の段階から検討すべきポイントについて解説します。
サーバーコストが高額になる3つの要因

1. セキュリティ要件の画一的な適用
メインの庁舎サイトで求められる高度なセキュリティ要件が、すべてのサイトに一律適用されているケースがあります。
個人情報を扱わない施設案内や広報用の小規模サイトにも、庁舎サイトと同等の二重化構成や専用サーバーが用意されていないでしょうか。
サイトの役割や扱うデータの性質に応じて、適切なセキュリティレベルを設定することで、過剰なコストを避けられます。
2. 技術進化への対応の遅れ
5年前、10年前に作成された入札仕様書が、技術の進化を反映しないまま更新され続けている場合があります。
当時は妥当だった「物理サーバー※」の選択も、現在ではクラウドサービスの方が低コストで高性能・高セキュリティを実現できるケースが増えています。定期的な技術動向の確認と、仕様書の見直しが重要です。
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※ 物理サーバー:実際に存在するハードウェアとして設置されるコンピュータのこと。自社の設備内(オンプレミス)やデータセンターに設置・所有し、運用・管理すべてを自社で行う形態。老朽化によるリプレースや保守管理が必要。
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3. 競争が働きにくい仕様書
入札仕様書に特定の機器メーカー名や、特定の構成方法(物理サーバー必須など)が明記されていると、実質的に特定のベンダーしか応札できない状況が生まれます。
これは意図的なものではなく、既存の構成をベースに仕様書が作成された結果であることが多いのですが、結果として価格競争が働きにくくなります。
実際のコスト削減事例
ここでは、実際にコスト削減が実現した事例を紹介します。
事例:地方自治体の学習センターサイト
| <変更前> | 専用物理サーバー(年間約120万円) |
|---|---|
| <変更後> | クラウドホスティング(年間約15万円) |
削減額:年間約105万円
このケースでは、個人情報を扱わないシンプルな情報提供サイトであったため、高額な専用サーバーは不要と判断されました。
クラウドサービスへの移行により、セキュリティレベルを維持しながら大幅なコスト削減を実現しています。
物理サーバーとクラウドの違い
従来の物理サーバーとクラウドサービスでは、コスト構造が大きく異なります。
主な違い
| 初期費用 | 物理サーバーは機器購入で数百万円、クラウドはほぼゼロ |
|---|---|
| 月額費用 | 物理サーバーは10万円〜、クラウドは数千円〜3万円程度 |
| 保守・更新 | 物理サーバーは5年毎の機器更新が必要、クラウドは不要 |
| セキュリティ対応 | 物理サーバーは別途契約が必要な場合も、クラウドは基本サービスに含まれる |
| 拡張性 | 物理サーバーは機器追加が必要、クラウドは即座に対応可能 |
ただし、扱うデータの性質や求められるセキュリティレベルによっては、物理サーバーが適切な場合もあります。重要なのは、サイトごとに最適な選択をすることです。
入札仕様書の見直しポイント

コスト削減の鍵は、入札仕様書の段階にあります。次回の入札時に検討すべきポイントを紹介します。
1. 構成方法を指定しない
「物理サーバーであること」「オンプレミス※であること」といった構成方法を指定せず、達成すべき要件(稼働率、応答速度、セキュリティレベルなど)を明記する方式に変更することで、多様な提案を受けられます。
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※ オンプレミス:情報システムを構成するサーバーやソフトウェアなどのIT資産を、自社が管理する施設内(庁舎内など)に設置し、自前で保有・運用する形態。初期費用や維持管理コストが高くなりやすい。
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仕様書への記載例
【提案要件】
サーバーの構成方法(オンプレミス、クラウド等)は指定しない。
以下の要件を満たす最も費用対効果に優れた提案を求める。
- 稼働率:99.9%以上
- 応答速度:平均2秒以内
- セキュリティ:最新対策が常時適用される
- バックアップ:1日1回以上の自動取得
評価項目:
- 年間維持コスト(40点)
- 技術更新への対応(30点)
- 災害時の継続性(20点)
- 拡張性(10点)
このような記載により、特定のベンダーや技術に縛られない、公平な競争環境を作ることができます。
2. 契約期間の柔軟化
長期契約は、技術の進化に対応しにくくなります。単年度契約や、短期での見直しが可能な契約形態を検討することで、常に最適な選択を維持できます。
よくある疑問への回答
Q. クラウドのセキュリティは信頼できるか?
大手クラウド事業者は、24時間365日の監視体制、定期的な第三者監査、国際的なセキュリティ認証の取得など、高度なセキュリティ対策を実施しています。適切な設定を行えば、物理サーバーと同等以上のセキュリティを確保できます。
ただし、マイナンバーなど特に機密性の高い情報を扱う場合は、別途慎重な検討が必要です。
Q. 移行作業の負担は?
一般的に、小規模サイトであれば1〜2ヶ月、中規模サイトで2〜3ヶ月程度の移行期間が必要です。並行稼働期間を設けることで、リスクを最小化できます。多くの場合、移行費用を含めても初年度からコスト削減効果が得られます。
現状把握から始める
コスト見直しの第一歩は、現状の正確な把握です。
まずは現在の契約内容を確認してみましょう。
- 月額・年額の正確な費用
- 契約期間と更新条件
- 提供されているサービスの詳細内容
- サイトで実際に扱っているデータの種類
その上で、近隣自治体や同規模自治体の事例を調査し、相場感を把握することをお勧めします。
おわりに
自治体のホームページ運用コストの見直しは、限られた財源をより効果的に活用するための重要な取り組みです。
「ホームページの運用費だから仕方がない」と考えるのではなく、サイトの役割に応じた適正なコスト配分を検討することで、年間数十万円から100万円以上の削減が可能になるケースもあります。
削減された予算は、住民サービスの拡充や、真に必要なDX投資など、より優先度の高い分野に振り向けることができます。
次回の入札準備を始める際には、ぜひ本記事の内容を参考に、仕様書の見直しを検討してみてください。
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入札仕様書の作成や、現在の運用コストについてお困りの際は、お気軽にご相談ください。
ご相談内容例:
- 現在の入札仕様書のレビューをしてほしい
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相談方法:
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まずは情報提供だけでも構いません。貴自治体のコスト適正化のお手伝いができれば幸いです。